ソフトウエアの会計と税務(Part1)
はじめに
情報通信技術の進化やAI、ロボティックスという言葉が世の中を賑わす昨今、ソフトウエアの会計・税務はすべてのビジネスにとって関わりの深いものとなっています。経理実務において必要に迫られ、自分で基準をしらべてみたものの、難しい表現が多くわからないと思った方は多いのではないでしょうか。ソフトウエアの会計・税務では主に下記2点が論点となります。
- いつからソフトウエアを資産計上し、いつ終了するか(タイミング)
- どのようなコストを資産計上し、どのようなコストを費用計上するか(範囲)
本稿では主に上記2点を中心にわかりやすく解説していきます。
目次
1. ソフトウエアとは
2. 計上タイミングーいつから資産計上し、いつ資産計上を終了するか
3. 計上範囲ーどのようなコストを資産計上し、どのようなコストを費用計上するか(次回)
1.ソフトウエアとは
ソフトウエアとは、
「コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等」
として会計上定義され、その範囲として
1. コンピュータに一定の仕事を行わせる為のプログラム等
2. システム仕様書、フローチャート等の関連文書
とされています。プログラムだけでなく、それに付随する関連文書も含めて考えます。税務上も同じものを規定していると考えられます。
2.いつからソフトウエアを資産計上し、いつ終了するか(タイミング)
会計上の取り扱い
ソフトウエア会計基準では、ソフトウエアを受注制作、自社利用、市場販売と利用目的別に処理を規定しています。
自社利用目的のソフトウエア
まず、自社利用目的のソフトウエアの資産計上の開始時点は「将来の収益・費用が確実であると認められる状態になった時点」とされており、開始時点はそれを立証可能な社内資料に基づいて判断します。例えば、下記のような資料に基づいて判断します。
- 開発ベンダーの作業完了報告書
- テストエビデンス
市場販売目的のソフトウエア
次に、市場販売目的のソフトウエアの資産計上の開始時点は「最初に製品化された製品マスターのの完成時点までの制作費」とされています。「最初に製品化された製品マスターの完成時点」とは、次の2つの要件が満たされた場合をいいます。
- 製品番号をつけたり、カタログやホームページで市場に販売する意思を確認できる状態
- β版にバグ取りや一部機能変更などが終了して、製品が市場で受け入れられるかどうか、他社製品と比較して競争力があるかどうかなどの検討を行うことができる程度のプロトタイプが完成した時点
市場販売目的ソフトウエアの資産計上の終了時点は、実質的に製品マスタが完成し、複製・大量生産ができるようになった状態をいいます。
受注制作目的のソフトウエア
受注制作については発注側でソフトウエアを計上するのみですので割愛します。
税務上の取り扱い
会計の考えを踏襲します。ただし、法人税基本通達7-3-15の3のソフトウエアに資産計上しないことができる費用(研究開発費)について「収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る」としています。これは、上述に従って会計上費用化できるものであっても、税務上は収益獲得又は費用削減にならないことが明らかであることを証明しなければならないということです。これが非常に悩ましいところで、会社は収益・費用削減の目的で開発を行うわけですから、これを立証することは非常に難しいわけです。簡単にいうと、プロジェクトの取り組み内容が具体化するタイミングから資産計上を始める必要がありますので、ここについては税務顧問などに相談しておくとよいでしょう。
会計と税務の違い
一般的なプロジェクト工程を例に、会計と税務の違いを図にすると下記のようになります。
ex.一般的なプロジェクト工程(自社利用目的)
a.会計上の考え方
b.税務上の考え方
ex.一般的なプロジェクト工程(市場販売目的)
a.会計上の考え方
b.税務上の考え方
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